「食」はヒトが生きていく上で必要不可欠なものであるが,わが国では「食」をめぐる様々な問題を抱えている。栄養面では食生活の乱れが一因となる生活習慣病に関する問題,食料経済では食料自給率の低下や食品ロスの問題が挙げられる。核家族化などの影響で食文化の継承も課題となっている。食品の安心・安全の面では,食中毒の発生件数や患者数は依然として減少していない状況である。飲食店では発生件数や患者数が多く,また仕出屋では患者数が多い。一方,外食や中食を利用する“食の外部化”が進んでおり,食を取り扱う現場の衛生管理はひじょうに重要である。食品にはわずかながら健康に影響を与える可能性がある危害要因(ハザード)が存在している。本講座では生物学的危害要因を中心に有害微生物,特に食に関連が深い細菌について,衛生管理対策や衛生教育を行う上で必要な知識が得られるよう,基礎情報から最新の知見までを解説する予定である。