日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.9 (2019)

表題:
室内環境における微生物汚染実態および制御[6]
食品工場の微生物制御におけるオゾンの利用
著者:
内藤茂三(食品・微生物研究所)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.9,pp.365−373(2019)

オゾンの殺菌の仕組みはオゾンが細菌の細胞壁を直接攻撃して分解してしまう溶菌作用である。細胞壁を攻撃すると細胞壁のより易反応性の官能基と反応して細胞内に侵入,酵素などを破壊していくので繰り返して使用しても耐性菌ができない。一方,従来の殺菌剤である次亜塩素酸ナトリウムやエチルアルコールは,細胞壁を通過し,細胞内の酵素を破壊する。オゾンは従来の食品工場の殺菌剤とは殺菌機構が異なるため,併用される可能性がある。食品工場においてはタンク,釜,撹拌槽,加熱槽等が配管,バルブ,ポンプ等でつながれていて食品原材料が工場空気と接触する機会の少ない飲料タイプのものと,蒸し機,焼成機,成形機,充填機といった機器が主にコンベアや台車等でつながれていて,食品原材料が工場空気と接触する機会の多い加工食品タイプがある。オゾンと微生物との反応には表面荷電が大きく関係する。微生物表面には解離したときに陽荷電を与える基と,陰荷電を与える基が混合して存在し,全体としてはその時の環境,具体的にはその時のpHにおける解離基の差し引き計算の結果が微生物の表面荷電として示される。オゾン水殺菌ではオゾンが分解して生成されるヒドロキシラジカル等が殺菌に関与するので微生物の表面荷電の状態が大きな影響を与える。加熱とオゾン処理で殺菌機構が異なっているため,相乗効果が認められる。また食品原材料等に含有されている重金属やアスコルビン酸とオゾンを併用することにより殺菌効果は増大する。和洋菓子工場には大腸菌群,酵母,乳酸菌等の細菌が多いので殺菌にはオゾンが有効である。

Key words:
Confectionery factory(製菓工場)/Food Deteriration-causative microorganisms(食品の微生物変敗)/Ozone gas(オゾンガス)/Ozonated water(オゾン水)/Airborne microorganismus(空中浮遊菌)/Lactic acid bacteria(乳酸菌).