日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.10 (2019)

表題:
損傷菌[6]
水産における損傷菌
著者:
澤辺智雄(北海道大学大学院水産科学研究院海洋生物工学分野),里見正隆(国立研究開発法人水産研究・教育機構 増養殖研究所 ウナギ種苗量産研究センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.10,pp.423−429(2019)

生鮮水産物に存在する細菌種は陸上で生産される食品から分離される細菌種とは異なり,多くの細菌種は増殖に塩分を要求する好塩性細菌で,一部のものは35℃で増殖できない低温性細菌である。また,海洋性細菌には人工の培地ではコロニーを形成できない菌種やVBNC状態の細菌も存在しているため,一般的な培養法では十分な菌数が計数されないことがある。そのため,特殊な損傷菌が多数存在するからでは?との懸念がある。しかし,生鮮魚介類の主要な細菌種はグラム陰性の好気性菌または通性嫌気性菌であり,損傷機構や修復機能は大腸菌などとほぼ同じであると考えられる。本稿では,水産物に関連する微生物の特徴について解説するとともに,水産物の代表的な食中毒菌である腸炎ビブリオの損傷回復機構をRNA-Seqで解析した結果を紹介し,また,水産物で特徴的な食中毒菌であるヒスタミン生成菌の損傷状態でのヒスタミン生成機構についてもとりあげる。

Key words:
Seafood(水産物)/Raw fish(鮮魚)/Injured bacterial cell(損傷菌)/Stress(ストレス)/Vibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)/Histamine producing bacteria(ヒスタミン生成菌).