日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.11 (2019)

表題:
食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [4]
腸球菌
著者:
谷本弘一(群馬大学大学院医学系研究科附属薬剤耐性菌実験施設)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.11,pp.481−489(2019)

腸球菌はグラム陽性球菌でもっぱら動物の糞便から分離されるレンサ球菌として知られてきたことから,長らくレンサ球菌属(Streptococcus)の1つのグループ(enterococcal group)とされてきたが,近年の研究から1984年レンサ球菌属から分離され腸球菌属(Enterococcus)が新たにつくられた。腸球菌は昆虫から人まで動物の腸管および植物に生息する常在菌で,消毒や滅菌に関しては一般的な細菌と変わりないが,さまざまな厳しい環境下で生存可能であることが知られている。近年は医療の進歩による易感染者の増加や抗菌薬を多用する病院環境において多剤耐性を示す腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)による感染症が大きな問題となっている。特にヒトの腸管によく生息するE. faecalisE. faeciumはプラスミドによる効率的な遺伝子伝達系を持っており,それにより多剤耐性化が進んできたと考えられている。

Key words:
Enterococci(腸球菌)/Intestinal bacteria(腸管常在菌)/Opportunistic infection(日和見感染症)/Vancomycin-resistant enterococci(バンコマイシン耐性腸球菌).