腸球菌はグラム陽性球菌でもっぱら動物の糞便から分離されるレンサ球菌として知られてきたことから,長らくレンサ球菌属(Streptococcus)の1つのグループ(enterococcal group)とされてきたが,近年の研究から1984年レンサ球菌属から分離され腸球菌属(Enterococcus)が新たにつくられた。腸球菌は昆虫から人まで動物の腸管および植物に生息する常在菌で,消毒や滅菌に関しては一般的な細菌と変わりないが,さまざまな厳しい環境下で生存可能であることが知られている。近年は医療の進歩による易感染者の増加や抗菌薬を多用する病院環境において多剤耐性を示す腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)による感染症が大きな問題となっている。特にヒトの腸管によく生息するE. faecalisやE. faeciumはプラスミドによる効率的な遺伝子伝達系を持っており,それにより多剤耐性化が進んできたと考えられている。