カビ胞子は耐熱性の低いものが多く,菌糸は胞子より耐熱性が低いので,カビは一般に60℃程度で死滅する。そこで,カビ制御の基礎資料の一助となるよう,湿熱および低温処理によるカビ制御について実験を行った。その結果,湿熱温度に強いカビの胞子は比較的熱に強く,50−55℃の温度域で緩慢な不活化曲線(死滅曲線)傾向を示した。一方,湿熱温度に弱いカビの胞子は50−55℃の温度域では不活化曲線は直線傾向を示した。好湿性カビ(Cladosporium属)の不活化温度域は,耐乾性カビ胞子(一般的なAspergillus属とPenicillium属)より5−10℃低いことが確認できた。また,-80℃保存によるカビの不活化曲線(死滅曲線)を検討したところ,保存初期段階に急激に減少するタイプと,緩やかに減少するタイプに区分できた。本実験結果は,今日の多様な環境において生じるカビ汚染対策に活用できると考える。