セレウス菌(Bacillus cereus)は易感染患者に日和見感染を起こすとともに,下痢型と嘔吐型の食中毒を起こす。日本では大部分が嘔吐型食中毒であり,喫食後短時間で発症する毒素型食中毒であり,ほとんどの場合発症後24時間程度で軽快する。しかしまれに急性肝不全や中枢神経障害を起こして死亡することもある。原因食は炒飯やスパゲッティなどのデンプン食が多い。原因毒素は低分子環状ペプチドcereulideで,セレウス菌に汚染された食品中に分泌される。cereulideは耐熱性,疎水性で100℃加熱にも失活せず,カリウムイオノフォアとしてミトコンドリアの呼吸を阻害する。産生遺伝子はプラスミド上に存在し,セレウス菌の中の一部の菌株のみが保有する。食品中のcereulideを簡便・高感度に検出する方法が無いので,検出キットの開発が望まれる。