日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.48,No.2 (2020)

表題:
食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [8]
ビブリオ科細菌
著者:
古下 学(水産大学校 食品科学科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.75−80(2020)

ビブリオ科細菌は,100種類以上知られている。日本において行政上の食中毒として扱われているのは,腸炎ビブリオ(V. parahaemolyticsu),コレラ(V. cholerae),ナグビブリオ(NAG Vibrio),ビブリオミミカス(V. mimicus),ビブリオフルビアリス(V. fluvialis)およびビブリオファーニシイ(V. furnissii)である。
近年,腸炎ビブリオは年間3~36件の食中毒発生件数であるが,1990年代は年間800件を超えており,食品衛生法改正および漁港市場への殺菌海水の導入により,食中毒発生件数が激減した。コレラとナグビブリオによる食中毒発生は,散発的であり,コレラに関しては2008年に発生した食中毒以降,発生していない。
ビブリオ科細菌による食中毒は,基本的に魚介類の摂食により引き起こされる。すなわち,食中毒の防止には,水産食品の生産から消費に至るフードチェーン全体に病原性ビブリオの管理が重要となる。生食用鮮魚介類の場合,漁獲直後から消費に至るすべての過程での10℃以下の温度コントロールが重要となってくる。また,使用される水は,浄水である必要がある。
食品衛生法の改正によりHACCP(危害分析重要管理点)が義務化となる。これにより,さらなる病原性ビブリオによる健康被害を減少させることが期待できるが,今後,さらなる衛生管理の充実が求められる。

Key words:
食中毒/Vibrio/食品衛生.