住環境に用いられる従来の抗菌製品の多くは,銀等の金属元素を用いた表面処理により,材料に抗菌性を与えている。この方法では,抗菌被膜の強度やコストの問題があるため,表面における抗菌性金属の分散量を過度に増大させることができない。また,金属元素を用いる方法は,菌を化学的に殺すことを目的とするが,実際には,菌は単体では人体に悪影響を及ぼすことは少なく,菌が成長し,バイオフィルムを形成することで人体に悪影響を及ぼすことが多い。従って,表面で菌がバイオフィルムを形成する過程を遮断できれば,抗菌材料として非常に有益である。一方,サメ体表を覆う微細構造(楯鱗)に抗菌効果があることが明らかになっている。本稿では,楯鱗と同様の機能を再現できる微細構造を設計し,設計した微細構造体を部材表面に設けることで菌のバイオフィルム形成が抑制されることを実証した例について解説する。