食品高圧加工では最小加工法として,高圧殺菌に向けて利用されることが多い。高圧処理における微生物の不活性化因子として,蛋白質変性,細胞膜傷害,酸化ストレス等があるが,耐圧性は,微生物の種類,菌株,食品組成等に影響を受ける。とりわけ細菌は,致死的に殺菌されるのみならず,亜致死的に損傷することが知られ,その損傷・回復挙動については不明な点が多い。高圧損傷菌の検出をより確実なものとするためには,低温での培養,検出培地の選択に注意が必要である。また,高圧損傷菌の特性を把握する上では,膜傷害評価,活性酸素の影響低減,耐圧性の向上考慮,リボゾームの構造変化,メタボローム解析,コロニー出現挙動等の視点で研究を深化させる必要がある。細菌以外にも,酵母の損傷回復等が調べられているが,ウイルス,真菌類,寄生虫を含め,食品高圧加工で問題となる生物学的危害要因の損傷回復については知見が極めて限られている。