カンピロバクター属菌は,近年最も多く発生している細菌性食中毒の原因菌である。患者の多くは数日で自然治癒するが,合併症としてギラン・バレー症候群等を起こす恐れがあり,DALYs(障害調整生存年)は6,064DALYsと推計され,代表的な細菌性食中毒の中で最も大きな疾病負荷になっている。
カンピロバクター食中毒の主な原因食品は鶏肉である。市販鶏肉のおよそ半数が汚染されているにも関わらず,消費段階において「生食用」と「加熱用」の区別が十分ないまま,生又は加熱不十分の状態で喫食することや,調理時の二次汚染が原因で食中毒に感染している。対策にはフードチェーン各段階における定量的,継続的なモニタリングに基づいたベースラインデータが必要であるが,現在定量的な検査法が統一されていない。今後,カンピロバクター属菌の特性に合った定量法が確立され,フードチェーン全体の汚染実態を掌握し効果的なリスク管理措置を開発することで,カンピロバクター食中毒発生件数減少を実現することが必要である。