平成年代には多くの食中毒が発生し,重大な食中毒が発生すれば,再発防止のために,食品衛生法の規則改正などの行政対応がなされた。平成前期には鶏卵に関連するSE食中毒が多発し,三重県桑名保健所が全国の自治体の協力を得てSE食中毒対策をまとめ,殼付き鶏卵の品質保持期限(賞味期限)表示などが定められた。平成年代の2大食中毒は大阪堺市学童集団下痢症とY乳業低脂肪乳食中毒であり,堺市学童集団下痢症では大規模調理施設衛生管理マニュアルが定められ,Y乳業低脂肪乳食中毒では総合衛生管理製造過程(マルソウ)の,現場調査の導入と3年ごとの更新が必要となった。自治体による夏の食中毒警報・注意報の主たる目的は腸炎ビブリオ食中毒対策であったが,平成13年に生鮮用鮮魚介類等に対して規格基準が定められ,腸炎ビブリオ食中毒が大きく減少した。その他腸管出血性大腸菌食中毒などの事例を紹介したうえで,行政対応を整理した。