Legionella属菌は冷却塔,温泉などの人工的な水利用施設から汚染されたエアロゾルを吸入することで感染し,致死性の肺炎を伴うレジオネラ症を引き起こす。一方,日本には黒湯とよばれる腐植質を多く含んだ温泉があり,「美肌の湯」とも称され,肌がつるつるになると言われている。しかし,黒湯に含まれる腐植質と塩素剤が反応し,遊離塩素が消費されてしまうことが懸念された。そこで,黒湯におけるLegionella属菌の汚染状況を調査し,次亜塩素酸ナトリウムによる黒湯中での殺菌効果が実際に低下いるか,基礎的検討を行った。黒湯中での次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌効果の低下が確認された。関東地域および北海道の入浴施設から計86試料の黒湯を試験に用いた。全体では培養法において11試料からLegionella属菌が分離され,PALSAR法において81試料から検出された。このように,両試験法の一致率はわずか18.6%に過ぎなかったが,培養法陽性の試料でPALSAR法陰性の試料は1試料もなかった。