カビと酵母の損傷およびその回復について,比較的初期の研究から最近に至るまでの知見を概説した。カビでは胞子の致死的損傷について熱死滅反応への媒質や阻害剤共存の影響の検討例を概説するとともに,死滅反応における活性化エネルギー値の意義および生理学的な細胞内部の損傷部位について述べた。胞子の亜致死損傷とその修復ではストレス応答の関与について述べ,損傷カビ胞子の発育動態の解析によって2つの損傷様式の存在を提示した。菌糸の損傷では,Woronin体やストレス顆粒の関与を紹介した。次に酵母の損傷では,二重平板法による加熱損傷菌の計数例を呈示した。また細胞部位の損傷例を加熱,凍結,高圧,放射線について紹介した。今後の損傷研究では,ストレス応答とともに最近の細胞死研究にも注視する必要性を指摘した。