医薬品の製造現場では,個々の製造品目の特性や構造設備に応じた明確なGMPを構築し,その運用により現場の清浄度を保ち,製品や原料,室内の装置や構造設備の汚染の予防に努めている。そのため,医薬品の製造現場では,取り扱う医薬品の微生物汚染が発生する可能性は極めて低いと考えられるが,その一方で,決められた手順やルールの不備,装置や設備におけるハード面での不備などに起因する,製造環境の微生物数が突発的に増加するケースや,取り扱う製品,原料および資材にて基準を逸脱するレベルの微生物汚染も確認されている。これらの背景には,工場における微生物汚染のリスク分析に基づく予防管理プログラムの確立が行われておらず,現場作業者への周知が不十分であることが予測される。そこで,実際に弊社で管理している現場での事例を参考に,医薬品工場での微生物汚染につながる現象とその原因について説明し,継続的に微生物汚染を予防するための考え方について説明する。