感染症診断における微生物検査には,病原微生物が存在する臓器・部位の検体を採取すること,病原微生物が存在する病期に採取すること,診断あるいは治療方針の決定に際して最も適した検査方法を選択することが重要である。同様に抗体検査にしても,抗体が出現してきている時期に採血することと,検出された抗体の特性を知る必要がある。陽性の検査結果は,比較的その解釈が容易であるが,その感染症を疑って陰性結果を得た場合は,その解釈にはいろいろなことが想定できる。真に陰性であるという以外に,検体採取部位と検体採取時期に齟齬があり,他の検査機会があれば陽性であったかもしれないこと,検体の保管・保存あるいは検査手技等に問題があり偽陰性が生じたことなどが考えられる。たとえ微生物検査が陰性であっても疫学的リンクと症状から確定診断できることもある。本稿では,感染症診断においても,明確な検査目的が必要であることを述べてみたい。