コロニー形成速度は,培養可能な損傷菌の損傷の程度の指標の一つと考えられる。一例として,浸透圧ストレスとしてスクロース10~50%を含むTryptic Soy Agar(TSA)培地上で培養して得られたEscherichia coli ATCC8739コロニーから,二段階フローサイトメトリー法によって,コロニー形成速度の一様な損傷菌を分画する条件を求めた。スクロース10%の場合に得られた細胞画分では,100細胞中92個が等しいコロニー形成速度(健常菌より1時間遅れ)を示したので性質の揃った損傷菌であると判断された。残りの8個は死菌であったと判断された。したがって,この条件で食品試料などに,例えば10個の菌を添加した場合は,9.2個の性質の揃った損傷菌が添加されたことになる。微生物試験法のバリデーションの観点からは,このような考えに基づき,ストレスの種類や菌種の違いなど各々の条件に応じた損傷菌の標準化は可能ではないかと考えられる。