ツボカビ門はその生活環の中で後方に向く1本の鞭毛をもつ運動性の胞子(遊走子)を形成することで特徴づけられる菌類の1群である。室内環境ではまれにしか検出されないが,水圏や陸上の生態系には腐生菌または寄生菌として普遍的に生息している。最近の遊走子の微細構造観察と組み合わせた分系統学的研究の進展により,広義のツボカビ門は単系統群ではないことが明らかとなっており,狭義のツボカビ門,コウマクノウキン門,およびクリプト菌門の3門,もしくはそれ以上の門に分割されている。分子系統学的および微細構造学的研究にもとづくこれらの菌群の最近の分類体系と,同定手法について解説する。