日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.48,No.11 (2020)

表題:
低温増殖性Paenibacillus属細菌芽胞の制御における有機酸および加熱処理の効果(原著論文)
著者:
小林哲也,山木一史,東 孝憲,太田智樹,八十川大輔,川上 誠(地方独立行政法人北海道立総合研究機構・食品加工研究センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.573−580(2020)

有機酸でpH調整した培地において,芽胞として接種したPaenibacillus属細菌の増殖が抑制されるpHは,酢酸>乳酸>クエン酸の順となる傾向があった。高い耐酸性を示したP. terrae No.9の増殖は,芽胞として接種したジャガイモペーストにおいて,酢酸ではpH 5.4,乳酸ではpH 4.8で10℃,28日間抑制された一方,クエン酸ではpH 4.8でも抑制されなかった。pH調整のみで増殖が抑制されない条件でも,92.5℃で20~30分間加熱すると28日間増殖が抑制された。pH未調整(5.7)のペーストでは45分間加熱する必要があったことから,有機酸によるpH調整と加熱処理の併用は,各々を単独で用いた場合よりも穏和な条件でP. terrae No.9の増殖を抑制した。このことを活用すると低温増殖性Paenibacillus属細菌の芽胞を穏和な条件でも抑制でき,冷蔵食品,特に袋物惣菜の賞味期限延長において,風味や食感の保持が期待できる。

Key words:
Psychrotrophic Paenibacillus spp.(低温増殖性パエニバシルス属細菌)/Spores(芽胞)/Organic acids(有機酸)/Heating(加熱)/Refrigeration foods(冷蔵食品).