有機酸でpH調整した培地において,芽胞として接種したPaenibacillus属細菌の増殖が抑制されるpHは,酢酸>乳酸>クエン酸の順となる傾向があった。高い耐酸性を示したP. terrae No.9の増殖は,芽胞として接種したジャガイモペーストにおいて,酢酸ではpH 5.4,乳酸ではpH 4.8で10℃,28日間抑制された一方,クエン酸ではpH 4.8でも抑制されなかった。pH調整のみで増殖が抑制されない条件でも,92.5℃で20~30分間加熱すると28日間増殖が抑制された。pH未調整(5.7)のペーストでは45分間加熱する必要があったことから,有機酸によるpH調整と加熱処理の併用は,各々を単独で用いた場合よりも穏和な条件でP. terrae No.9の増殖を抑制した。このことを活用すると低温増殖性Paenibacillus属細菌の芽胞を穏和な条件でも抑制でき,冷蔵食品,特に袋物惣菜の賞味期限延長において,風味や食感の保持が期待できる。