日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.48,No.11 (2020)

表題:
感染症研究と計算科学の橋渡し:病原体の理解と制御に向けて
著者:
佐藤裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.581−589(2020)

近年,人類がこれまで遭遇したことのないウイルス感染症が頻発し,社会に甚大な損害を与えている。グローバル化の進む現代では,地球上のどこかで発生した感染症は,たちまち世界に広がる。ウイルス感染症対策は,世界が共有する公衆衛生上の最重要課題の一つと位置付けられている。流行や重篤化のリスクの高い変異ウイルスの早期検知は,新しいウイルス感染症の制御の鍵を握る。我々の研究室では,コンピュータの助けを借りることにより,ウイルスに生じる変異の効果を構造レベルで解析し,得られた情報を変異ウイルスの理解と制御に生かすことを目指している。従来の感染症対策に「計算科学」の手法を取り入れることにより,ウイルスのリスク管理と制御法開発の新しい道が開かれると期待している。本解説では,まずウイルスの持つ陰陽の二面性を俯瞰し,次いで我々の研究を紹介する。微生物の理解を前提とする防菌防黴分野の研究の一助としていただければ幸いである。

Key words:
Emerging and re-emerging infectious disease(新興再興感染症)/RNA virus(RNAウイルス)/In silico structural analysis(インシリコ構造解析)/Prediction of mutation effects(変異の効果予測)/Interdisciplinary study(学際研究).