講座「損傷菌」の閉講にあたって,本稿を含む18編の講座解説の内容を概観するとともに,損傷菌研究の今後を展望した。全体構成は,①概念・方法論,②対象場(物),③制御法,④微生物,⑤評価論・応用展開・将来展望で,それぞれの視点から損傷菌研究に携わる専門研究者に執筆いただいた。損傷菌は食品で問題視されているが,医療や諸環境では一部の分野を除いてあまり関心がもたれていない。しかし,殺菌・滅菌・消毒の効果の評価や微生物試験の実施においては,基盤的問題として損傷菌が関わることが少なくないことから,今後も基礎・応用両面からの研究が必要である。それらの一面からではあるが,研究の方向性や展望について私見を述べた。