日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.48,No.11 (2020)

表題:
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等
[9]蓄熱槽における微生物汚染と抑制対策
著者:
赤井仁志(福島大学 共生システム理工学類)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.601−607(2020)

天気任せの太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギー由来の電力が増え続ける中,余剰気味の電力を利用してヒートポンプを運転させて熱を生み出し,給湯の貯湯や暖冷房熱源の蓄熱をする必要性が生じている。貯湯や蓄熱は,技術も確立され,導入コストも安く,寿命も長い。蓄熱槽水がレジオネラ属菌に汚染された場合でも,居住者がレジオネラ症に罹患する可能性は低い。しかし,建築物保守管理者が蓄熱槽の清掃時等にレジオネラ症に罹患する可能性がある。蓄熱槽の調査で,システム基準で30システム中,14システム(46.7%)から培養法でレジオネラ属菌を検出した調査事例がある。また,他の水蓄熱槽の調査で,蓄熱槽水の温度範囲が14.9℃以下と15.0℃~24.9℃でレジオネラ属菌数が,35.0~44.9℃の菌数とほとんど変わりなかったこともあった。抗レジネオラ剤として,3.0~10.0 mg/ℓの濃度のチアゾリンを蓄熱槽水に投入した結果,投入から数日から数週間で蓄熱槽水と蓄熱槽壁面の拭き取り検体から,レジオネラ属菌が検出しなくなった試験結果がある。抗レジオネラ剤には鋼管や銅管を腐食させる成分が含まれることが多い。空調機や配管を損傷させるおそれがあるため,防錆剤を同時に投入することが必要である。

Key words:
Legionnaires’ Disease(レジオネラ症)/Thermal Storage Tank(蓄熱槽)/Heating and Cooling Equipment(暖冷房設備)/Heat Pump(ヒートポンプ)/Use of Surplus Electricity(余剰電力利用).