高齢者介護施設は,感染症に対する抵抗力が減弱した高齢者が集団で生活する場であり,感染が起こりやすく,広がりやすい環境である。感染自体は完全になくせないことを踏まえ,被害を最小限に留めることが求められる。そのためには普段から感染に対する対策を実施し,いかに早く感染した人の異常に気付き,感染の拡大を防止することが重要である。本稿では,高齢者介護施設における注意すべき感染症(集団感染等)の特徴,感染対策の基礎(病原体の排除,感染経路の遮断,宿主抵抗力の向上),施設内における衛生管理(環境整備,トイレ等の衛生管理,嘔吐物・排泄物の処理等)について解説した。また,入所者,職員の健康管理や感染予防としてのワクチン接種や介護・看護ケアにおける手洗いおよび標準予防策についても記述した。