世界の抗菌薬耐性菌による死亡者は年間およそ70万人と言われている。しかし,このまま何も対策をとらなければ2050年には1000万人へと爆発的に増加し,ガンによる死亡者数を上回ると警告されている。最近の調査結果から2017年の国内における耐性菌による死亡者は8000人以上と推計された。これらの耐性菌は医療関連施設における接触感染が主であり,感染対策は,医療従事者の手指を介した接触感染経路対策に重点がおかれ実施されてきた。しかしながら近年では医療の現場に精密な医療機器や携帯端末,さらには快適装備が導入され多く利用されている。その一方で,これらの装置・装備が医療関連感染を惹起する病原体の温床となることも事実であり,今までの概念では把握しきれない感染経路が存在することも明らかとなっている。すなわち医療従事者や患者にとって“ベンリ”や“カイテキ”なモノは常に感染伝播の媒介となることも認識しておく必要がある。したがって,医療現場の周辺,環境には病原体が付着し汚染されていることを前提に,医療従事者は患者ケアの直前の手指衛生ならびに限りなく汚染を少なくする環境管理が必要である。