酵母はカビ・キノコと同じ菌類でありながら,形態学的特徴が乏しい点において細菌と共通しており,細菌と似た分類・同定の歴史を辿ってきた。一方で,真核生物である酵母には,性に基づく生物学的な種の概念がある点において,細菌とは大きく異なる。そして,酵母の分類・同定手法,分類体系は,科学の進歩に伴い変遷してきた。本稿では,酵母の分類の背景,種レベルの同定法として一般的になっている生理・生化学的性状試験,DNA塩基配列解析,最新のMALDI-TOF MS法,さらに“One Fungus=One Name(1F=1N)”に伴う二重命名法廃止と統一名の導入の影響などを概説する。