近年,食品の製造・貯蔵技術は飛躍的に進歩し,腐敗・変敗は激減し,さらに,従来頻繁に発生していた古典的な細菌性食中毒の事件数・患者数はいずれも激減した。一方では,少数ではあるが大型で広域な集団食中毒事件が発生し,食品の衛生管理に対する関心は依然として高いことから,製造業者は消費者が求める安全・安心な食の提供に努めなければならない。従来の食中毒に関する講座の多くは,個々の病原微生物の各論を網羅することが多かったが,本講座では,食品製造現場における微生物危害および衛生管理,環境微生物のモニタリング,加熱に頼らない新規殺菌法,食品の保存技術など「食の安全・安心」に直結する視点での解説も多く取り入れることにした。