食品製造現場には,多くの微生物学的な汚染源が存在する。特に環境からの微生物汚染は潜在的で,見逃しやすい。一般衛生管理事項のうち,「施設の衛生管理」及び「設備等の衛生管理」を徹底することは,環境からの微生物汚染を防ぐために重要である。本講座では,環境からの微生物汚染に焦点を絞り,潜在的な微生物危害要因(主に構造上の危険源)及び衛生リスクを低減するための対処策について,関連する法規,規格及び国際的なガイドラインを基に紹介する。潜在的な危険源として,「微生物が増殖しやすい環境」及び「微生物が製品(食品)に混入しやすい環境」がある。食品残渣及び水が意図せず存在する箇所,それらを洗浄し難い箇所,製品上方部の汚れや結露は代表的な危険源といえる。危険源が存在する(衛生リスクが高い)ケースと,危険源による影響を減じている(衛生リスクが低い)ケースを対比することで,より良好な衛生環境を維持する手段を考えることができる。