日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.49,No.5 (2021)

表題:
紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜
4.新しい大気圧低温プラズマと表面処理および液中殺菌への応用
著者:
沖野晃俊(東京工業大学 未来産業技術研究所),高松利寛(東京理科大学 生命医科学研究所,国立がん研究センター 先端医療開発センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.251−256(2021)

物質の第4の状態であるプラズマは物理的・化学的に高い活性を持つため,さまざまな分野で応用されている。例えば,10,000℃以上の高温を容易に実現できる事を利用した廃棄物処理や核融合などへの応用,気体に固有の波長の光を発する事を利用した光源や元素分析などへの応用があげられる。さらに,反応性の高い粒子や高速の粒子が生成されることを利用し,半導体プロセシングには不可欠な技術となっている。これまで,各種の産業応用には減圧下で生成されるプラズマが広く使用されてきたが,21世紀に入った頃から,大気圧下で生成されるプラズマが注目を集めるようになってきた。これは,ガス温度が室温程度の低温な大気圧プラズマ源の開発が進んだ事と,一様で安定な大気圧プラズマを大面積もしくは大容量で生成する技術が大きく進歩した事が要因である。低温の大気圧プラズマは直接手を触れることもできるが,ガス温度が低いだけであって,プラズマ中のラジカルなどは減圧下と比較してむしろ高い密度で生成されるため,高い反応性や処理能力を持つ。つまり,減圧チャンバに入れられない大型の物質や生物試料,熱に弱い素材をプラズマ処理できるようになり,表面処理による高機能化や接着性の向上などが期待されている。さらに,大気圧プラズマは液体に照射したり,液中にバブリング導入できるため,液体の処理や液体の殺菌などへの期待も高まっている。本稿では,いくつかの新しい大気圧低温プラズマ装置と表面処理および殺菌への適用例について紹介する。

Key words:
プラズマ/表面処理/殺菌/ラジカル/温度制御.