木材を劣化させる微生物のなかで,木材の強度低下を引き起こす木材腐朽性担子菌に焦点を当て,腐朽木材からの菌の分離・同定方法,分離菌の生育温度や木材分解力の検証方法を解説した後,実際の木造構造物の腐朽事例をあげ,腐朽を引き起こした原因菌と推定される担子菌について考察した。ここで紹介する担子菌は,オオウズラタケ,チョークアナタケ,シイサルノコシカケ,イドタケ,カワラタケである。一方,攻撃される木材の耐朽性についても解説を行い,担子菌と木材内の抗菌成分との戦いの結果,担子菌が強いと木材腐朽が起こることを説明した。また,今回のような菌の分離を前提とした研究手法について,有効性とともに解明できない事項があることにも注意を払うと共に,腐朽を予防する対策として,木材保存剤による防腐効果についても取り上げた。