人類はその長い歴史において常にウィルスや微生物と闘ってきたが,その一方では彼らとの共存・共生の意義も論じられている。ときまさにコロナ禍の中,微生物制御においてはどのような概念のもとに闘えばよいのか,制御の基本概念に立ち,今後の方向性について論じた。制御の基本要素は制御対象物や場,微生物,そして制御法の3つであり,実用にあってはそれらをとりまくいくつかの条件的な要素も関わる。微生物制御はテクノロジーであるが,将来的なその意義づけのために,制御の本質である制御機構の詳細が理解される必要がある。このためにはサイエンスの協同が欠かせない。またとくに食品の分野で普及するHACCPのようなシステム化の概念もより重要性を増しており,その信頼性や精密性の向上にはシステムの協同も不可欠である。本稿では,さらに生命論の視点からも微生物との闘争と共生の問題について論じるとともに,今後の制御の方向を考える上で,関係性,時代性,局所性の3つの適性要素を挙げて考察した。