木材は再生可能な天然素材であり,加工性に優れた材料である。しかし,天然素材であるがゆえ,生物による劣化を受ける。特に菌類による劣化は腐朽と呼ばれ,主に担子菌による褐色腐朽や白色腐朽,不完全菌類等による軟腐朽は被害が甚大である。そこで薬剤による木材防腐処理が必要となる。防腐処理には建築現場で塗布,吹き付けなどを行う表面処理と,機械装置を用いて加圧注入を行う工場処理に大別される。現場処理では薬剤の付着量が少なく,効力持続期間が短く繰り返し処理が必要であるが,簡便であるという利点を持つ。有機ヨウ素系化合物とトリアゾール系化合物が主で,防虫剤にこれらを単独あるいは組み合わせた薬剤が主である。工場処理では大掛かりな装置を必要とするが,薬剤の吸収量が多く,効力持続期間が長いという利点を持つ。主な薬剤はJISあるいはJASに規定されているが,第四級アンモニウム化合物や銅化合物と他の化合物を混合した薬剤の他,有機化合物を混合した薬剤などがある。