有機溶媒耐性菌Kocuria rhizophila DC2201は,各種アルコール等の有機溶媒に高い耐性を示し,大腸菌では困難な毒性の高い化合物をターゲットとした物質生産宿主としての利用が期待される。特に筆者らがこれまでに行ってきた,スチレン酸化酵素(SMO)を利用したエポキシアルカン類の生産において,大腸菌宿主を利用した場合の3〜7倍程度の生産効率の向上を示し,本菌株が有用なバイオツールであることが実証されている。しかしながら,本菌株を利用した物質生産例は少なく,利用できる遺伝子工学的ツールなども極限られている。そこで筆者らは,本菌株を物質生産宿主として利用するために必要なシャトルベクター開発およびゲノムDNA編集ツールを独自に開発し,様々な外来遺伝子の発現や遺伝子破壊による代謝系改変について研究を試みている。本稿ではそれらの一部を簡単に紹介したい。