バイオ水素生産は水素社会の実現に必須なCO2フリー水素製造技術として期待され,世界各国でその研究開発が進められてきたが,生産性が低いことが課題であり,経済性ある生産プロセスは未だ確立していない。著者らは暗発酵水素生産と光発酵水素生産を組み合わせたセルロース系バイオマスからの高効率バイオ水素生産プロセスの確立を目指し,代謝工学による水素生産微生物の改良に取り組んでいる。本稿では,大腸菌を用いたバイオマス由来糖類からの暗発酵水素生産に関して,異種水素生成酵素の導入,および,コーンストーバーの糖化工程で生成する発酵阻害物質の影響について解説する。また,暗発酵水素生産で副生する酢酸から光発酵により水素を生産できる紅色非硫黄細菌Rhodobacter sphaeroidesに関して,酢酸資化経路の改変,炭素貯蔵物質合成酵素の破壊,水素生成酵素発現強化,炭酸固定経路の破壊の影響について解説する。