ドライエイジングビーフの熟成香に真菌が及ぼす影響に注目し熟成期間中における香りと真菌の経時的変化を調査した。試料は熟成10日経過後熟成香が上昇するとともに,試料から好冷性真菌であるThamnidium elegansとMucor strictusが検出された。分離されたM. strictusを5℃で20日間培養したところ,熟成香と同様の強いナッツ臭が集落より発生したことより真菌が食肉に熟成香を付与している可能性が考えられた。また,T. elegansとM. strictusは酵素産生性を有しており,15日間以上の熟成を行うことにより低温下でも反応が進むことが確認できた。真菌の酵素産生に必要な期間が熟成香の発現に至るまでの期間と一致することより酵素反応も熟成香に影響を与えている可能性が示され熟成香は真菌の酵素産生性とM. strictusの産生する香りが関係していることが示唆された。特にM. strictusの存在は熟成香の付与に大きく影響していると思われた。真菌をコントロールすることにより熟成香を効率的に付与できる可能性が示された。