芽胞形成細菌の基礎と最新の話題を概説。芽胞は高い物理的・化学的抵抗性を示すためその殺滅には困難を伴い,食中毒や院内感染,食品製造過程での汚染対策と微生物制御において難題の細菌群である。栄養分の枯渇などが引き金となり芽胞形成が開始され,情報伝達系の「多成分リン酸リレー系」と転写制御のシグマ因子による「シグマカスケード」が働き,シグマ因子と芽胞形成遺伝子が三次元的に時期特異的/部位特異的に細胞内で逐次発現されて芽胞形成が進行する。休眠状態の芽胞は,ひとたびアミノ酸や糖などと接触すると速やかに発芽して栄養増殖細胞に復帰する。発芽には種々の受容体たんぱく質が関与している。芽胞の示す抵抗性のメカニズムや芽胞の静菌・殺滅対策についても概説する。