新型コロナウイルス感染症の脅威は,死亡率が高いこととどこで感染したか分からないことにある。罹患後の致死率はワクチン接種により低減したが,飛沫や飛沫核・微小飛沫による伝播に着目してリンクが明らかになるのは30%しかない。かつて,標準予防策につながる院内まん延を起こしたB型肝炎ウイルスや夏の咳の風邪のRSウイルスのように,SARS-CoV-2は環境中でも長時間感染力を保ち,感染飛沫で汚染された処を触った手で自分にうつすfomite transmissionが疑われる。さらにこのウイルスのレセプターは口や鼻の出口近くの粘膜に多く存在し感染が成立する。そこで,口や鼻を触らないためのマスクと,タイミングと使う位置を考えた手洗いで予防しようという戦略である。しかし,これは2009年の新型インフルエンザの院内感染予防と変わらず,それ以降の飛沫伝播する感染症や今回のCOVID19でも重点を変えただけで違いはない。日常の感染予防として,次の新たなパンデミックにも流用可能な手立てである。