レジオネラ肺炎は市中肺炎の1%程度と頻度は多くない。感染症発生動向調査によると2003年に146人であるのに対し,2019年に2314人と15倍以上増加している。また,その死亡率は依然として高く,呼吸不全を呈する市中肺炎の原因菌に限ると肺炎球菌(18.2%)に次いでレジオネラ菌(14.4%)が多い。レジオネラ肺炎の予後改善には早期診断治療が必要であり,治療開始の遅れは死亡率増加につながる。質量分析計による細菌同定は煩雑な試料前処理を行わず,属や種を容易に識別することのできる手法として注目されている。今回我々は質量分析計において,L. pneumophiliaの同定と同時に血清型の判定を行うことを目的とした。エタノール・ギ酸抽出法によりコロニーを処理すると,温泉水サンプルと臨床分離株の29株すべてでL. pneumophilia同定および血清型判定が可能であった。質量分析計は迅速なL. pneumophilia同定および血清型判定に有効な手法であることが示唆された。