リン酸塩水溶液(移動相)をシリコーンチューブ内に種々の速度で送液し,チューブの一部分(100~600 mm)を種々の温度のpH調整NaOCl水溶液に浸漬した。その結果,遊離有効塩素(FAC)がNaOCl水溶液からリン酸水溶液内に抽出された。ナトリウムイオンはリン酸排出液中からは検出されなかった。FACの抽出量は,NaOCl水溶液の非解離型次亜塩素酸(HOCl)の濃度と温度に依存していた。これらの結果は,FACはHOClとして抽出されており,抽出は濃度勾配と熱を推進力とするチューブを介する拡散で進行することを示した。加えて,リン酸塩水溶液の流速とpH,そしてチューブの浸漬長さもFAC抽出量を決める操作要因であった。Staphylococcus aureusおよび Escherichia coliの菌懸濁液をチューブに送液すると,生菌数はFAC抽出量に依存して徐々に減少した。以上の結果は,HOClがシリコーンチューブを介して簡便かつ連続的に抽出できることと,それによってチューブ内を流れる水溶液の殺菌ができる可能性が示唆された。