ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)は小麦粉やカツオ節などの貯蔵食品に繁殖する。そこで,貯蔵食品を守るための,ダニ防除剤の効果を付与したパッケージの開発が求められる。本研究では,ケナガコナダニに有効な薬剤として分岐型脂肪酸に着目し,その殺ダニ効果,忌避効果,及び薬剤効果の持続性について調査した。今回検討した6種の分岐型脂肪酸の中で,2-ブチルオクタン酸(iso-C12)が最も高いダニ防除効果を示した(LC50:32 mM, EC50:15 mM)。iso-C12処理24週後までケナガコナダニの生存数及び死亡数はほとんど変化せず,高い殺ダニ効果を持続させた。iso-C12処理28~72週後では逃避数が半数を超え,高い忌避効果を持続させた。さらに,iso-C12接触後のケナガコナダニの挙動を観察したところ,接触3時間後にほとんどの個体がImmobilized型の挙動を示した。また,iso-C12含浸不織布(レーヨン100%,60 g/m2)は,iso-C12を他の素材に固定した際よりも高いダニ防除効果を示した。このことから,iso-C12含浸不織布が食品用パッケージの素材として最も適していると考えられた。