化粧品は栄養価が高く,常温で保存され長期間にわたり使用されることが多いことから,防腐剤が不可欠となる。本研究では,化粧品に汚染するAspergillus属およびFusarium属に対して,カチオン性モノマーとしてDAM(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)を用いた5種類の抗菌性ポリマーの抗真菌作用を検討した。その結果,A. brasiliensisに対しては,DAM/tert-アクリル酸ブチル(BA)が60/40の時に最も効果が高く,最小発育阻止濃度(MIC),最小殺カビ濃度(MFC)はいずれも0.63wt%であった。また,同ポリマーを用いてA. nigerおよびF. oxysporumに対して菌糸体の成長阻害試験を行ったところ,両カビに対して十分な効果を示すことが明らかになった。また添加ポリマー濃度の増加に伴いエルゴステロール量の減少が認められたことから,作用機序はエルゴステロール生合成阻害による可能性も示唆された。更に添加ポリマー濃度の増加に伴い,分生子頭の直径が小さくなり,隔壁間の距離が長くなることも明らかとなった。保存効力試験を行った結果,本ポリマーはメチルパラベンと同等以上の効力を有し,メチルパラベンと併用することでさらにその効力が高まった。以上の結果より,DAM/tert-BA(60/40)は化粧品防腐剤としての応用可能性が期待できる。