食品とは人間が日常的に摂取する食物の総称とされ,その微生物危害とは,品質すなわち食品が持つ本来の価値が,置かれた環境,すなわち食品そのものを含めたその品質に影響が及ぶ範囲における,微生物の活動により生じた望ましくない状況,ひと言でいえば汚染により,低下させられた状態と考えられる。微生物による汚染の原因と対策を考えるにあたっては,『微生物と賢くつき合う』,そのためには,細菌やカビを,絶滅させるのではなく管理する,具体的には,微生物による害のない状態の製品や環境をつくることを目的として,汚染状況や改善のための処置が与える影響を定量的に解析し,結果に基づいて必要な制御を行なう,との考え方が必要である。それに基づき,この10年間に当学会より出された,食品危害とその防止に関連すると思われる論文や特集講座などの情報を,年ごとに列挙した。これらの情報と学会主催の講座やシンポジウム,さらに今後の最新情報とが相まって,より確実な汚染防止へと繋げられるよう祈念して,本講座開講の一文とするものである。