屋外および屋内の空気中には様々な真菌胞子・菌体が存在しており,感染症やアレルギーを引き起こし,食品で腐敗やカビ毒汚染の原因となる。ヒトや動物へ真菌感染症を引き起こす真菌は,土壌や大気中,水系などの環境中に普遍的に存在している。主な真菌症の原因菌としては,皮膚糸状菌,カンジダ,アスペルギルスが広く認識されている。また何らかの理由によって屋内での真菌濃度が高くなった場合に,居住者への吸入曝露量が多くなり,抗原感作が繰り返されることによって,アレルギーを発症することがある。食品を汚染し問題となる真菌には,食品の可食性を損なう腐敗真菌と,食品上での生育に伴い食品中にカビ毒を蓄積するカビ毒産生菌が挙げられる。気温や,食品の水分活性,pH,栄養条件等の影響から,真菌の食品における生育可能範囲は細菌よりも幅広い。これらの病原真菌および食品危害真菌について,具体的例を示しつつ,解説する。