多種多様な,清涼飲料水について細菌芽胞の危害と対策についてまとめた。特に,酸性飲料は,芽胞細菌種の増殖限界pH領域にあることから,それらの耐熱性データを収集して,現実的な加熱殺菌条件を算出することは,大変な労力が必要であるが,重要であることから,その実験手法について紹介した。また近年は,遺伝子解析による微生物同定で,生物学的な性状が一致しなくても,同属や異なる種に分かれるといった分類の再編が進み,食品に関連する微生物情報の検索を困難にし,混乱を招く状況にある中で,読者に分かりやすく,清涼飲料水で問題となる芽胞細菌種と対象となる製品群を照合する形で整理した。その上で,細菌芽胞汚染の少ない原材料を用い,製造工程における細菌芽胞の増加を防止するために設備を衛生的に維持することが求められる。さらに今後は,地球温暖化で夏場の気温が40℃を超える地域が増えることから,これまでは問題にならなかった流通上での高温菌種の増殖危害への対策として,この常温に対する管理の考え方を改めることは喫緊の課題である。