日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.51,No.9 (2023)

表題:
焼成貝殻ナノ粉末含有する透明性を持った抗菌・抗ウイルス塗料の開発
著者:
澤井 淳(神奈川工科大学・健康医療科学部・管理栄養学科),中川芳高(NS技研)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.549−554(2023)

貝殻の主成分は,炭酸カルシウム(CaCO3)である。貝殻を高温で焼成することにより,主成分のCaCO3が酸化カルシウム(CaO)となり,このCaOが抗菌活性を発揮する。この焼成貝殻粉末(HSP)を含む内壁用塗料は既に販売されているが,濁度が高く用途が限られている。本稿では,ホタテ焼成貝殻粉末含む透明性が高く,抗菌活性が長期間持続する塗料の開発について解説した。ホタテHSPのマイクロ粒子をホタテHSPは粒径が0.1 µm程度のナノ粒子に粉砕し,優れた接着特性およびバインダー特性を有するポリビニルブチラール(PVB)と混合した。元素分析より,ホタテHSPは水酸化カルシウムとして塗料中に存在していることが分かった。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面は,高い抗細菌活性および抗ウイルス活性を示し,かつ長期間にわたって活性を保持することができた。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面の抗微生物活性は,表面の水和による強アルカリ環境の発現によるものであり,活性の長期間の保持はPVBがHSP粒子表面をカバーすることで,ホタテHSPと空気中のCO2やH2O分子との接触・吸収を大幅に抑制することに起因していると考えられる。

Key words:
Heated seashell powder(貝殻焼成粉末)/Calcium oxide(酸化カルシウム)/Antibacterial activity(抗菌活性)/Antiviral activity(抗ウイルス活性)/Polyvinyl butyral(ポリビニルブチラール).