貝殻の主成分は,炭酸カルシウム(CaCO3)である。貝殻を高温で焼成することにより,主成分のCaCO3が酸化カルシウム(CaO)となり,このCaOが抗菌活性を発揮する。この焼成貝殻粉末(HSP)を含む内壁用塗料は既に販売されているが,濁度が高く用途が限られている。本稿では,ホタテ焼成貝殻粉末含む透明性が高く,抗菌活性が長期間持続する塗料の開発について解説した。ホタテHSPのマイクロ粒子をホタテHSPは粒径が0.1 µm程度のナノ粒子に粉砕し,優れた接着特性およびバインダー特性を有するポリビニルブチラール(PVB)と混合した。元素分析より,ホタテHSPは水酸化カルシウムとして塗料中に存在していることが分かった。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面は,高い抗細菌活性および抗ウイルス活性を示し,かつ長期間にわたって活性を保持することができた。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面の抗微生物活性は,表面の水和による強アルカリ環境の発現によるものであり,活性の長期間の保持はPVBがHSP粒子表面をカバーすることで,ホタテHSPと空気中のCO2やH2O分子との接触・吸収を大幅に抑制することに起因していると考えられる。