菓子製造業は小規模の事業所によるものが多く,HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が中心である。菓子類の微生物的なリスクは,水分含量や原材料組成,製法により大きく異なる。菓子類のうち,特に水分含量が高く消費期限の短い生菓子では,細菌による変敗が問題となりやすい。本研究では,和洋生菓子を製造する小規模事業所の細菌の分布と製品との関連性を把握し,有効な衛生管理への手がかりを得ることを目指した。そのために,拭き取り試験とMALDI-TOF MS微生物同定システムを併用し,製造工程や製品から検出される細菌の傾向を調査した。その結果,和菓子工場及び洋菓子工場の採取箇所や製品の種類により,検出される細菌類の傾向に差異が認められた。本稿では得られた傾向を報告するとともに,衛生管理上の注意点について考察する。