人類は様々な感染症に悩まされてきたが,病原微生物学の進展,抗菌剤,抗ウイルス剤の開発等によって,20世紀後半になると先進国では感染症が起こっても致死率は低下しており,先進国での医療・公衆衛生上の問題は成人病・生活習慣病等が中心となっていた。しかし,途上国では感染症が未だに大きな脅威となっている。しかし,2019年末に中国武漢で発生したCOVID-19が欧米先進国で途上国以上の多数の感染者を出す事態となったので,改めて感染症の重要性を認識せざるを得ない状況となった。そこで、「パンデミックの歴史的概観」と題する3回程度の解説のシリーズを組み,本号では第1回としてCOVID-19を取り上げて,世界と日本の感染動向,医療体制等を概説する。そして,次号以降でスペイン風邪,天然痘,ペスト,コレラ,その他の歴史的な感染症を取り上げることにする。