日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.51,No.12 (2023)

表題:
現代アートに発生した真菌類の特徴(原著論文)
著者:
川上裕司(東京家政大学環境教育学科 生物工学研究室),萩生田遼,広瀬 大(日本大学薬学部 病原微生物学研究室),小谷野匡子,大川美香((株)絵画保存研究所)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.677−684(2023)

2014年に創作され,8年ほどシンガポールの倉庫で保管されていた現在アートに発生した真菌の分離・同定検査を行った。作品の真菌発生部位の一部は絵具が侵食され,欠損が認められた。分離した菌株について,形態学的およびDNAの系統解析による同定検査を行った。この結果,Restricti節に属する好乾性のAspergillus4種(A. penicillioides,A. clavatophorus,A. gracilis,A. verrucosus)と好湿性の黒色酵母様菌が1種(Aureobasidium leucospermi)が分離された。4種のAspergillusについては,保存作品に対してfoxing,stain,変色,亀裂,剥落などを引き起こす汚染・劣化の起因菌であった。黒色酵母様菌は,酵母に似た粘性のコロニーを形成した。真菌の発生原因として,作品の保管中および輸送中に温湿度管理の不備によって水分が供給されたことが推察された。

Key words:
Contemporary art(現代アート)/Aspergillus(アスペルギルス)/Aspergillus section Restricti(レストリクティ節)/Foxing(フォクシング)/Art conservation(絵画保存).