本研究では,シート状化粧品において,防腐力低下の原因と考えられる微生物の増殖活性が変動する要因を解明することを目的とし,P. aeruginosaの増殖活性及び不織布中の分布を調査した。P. aeruginosaに対する防腐力は,化粧水と比較して,リヨセルまたはポリエステルに不織布重量比200%,400%,600%で化粧水を含浸した場合において低下した。リヨセル不織布を用いたクライオSEM観察及び増殖活性測定の結果から,P. aeruginosaの増殖活性は400%含浸不織布中で増大し,接種したP. aeruginosaは空隙に隣接する液体部分に局在することが明らかになった。また,2000%含浸時の不織布及び400%含浸時の原料繊維では空隙は減少し,増殖活性の増大は認められなかった。以上より,空隙及びそれに隣接する液体の比率が微生物の増殖活性を増大させることに重要な因子であり,不織布中ではこれらが好適な比率になることが示唆された。本知見は,より安心安全な微生物制御を実現するシート状化粧品開発に活用し,消費者満足に繋がることが期待されるものである。