日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.52,No.3 (2024)

表題:
日本防菌防黴学会研究賞受賞論文
天然系抗菌性物質の防菌防黴効果とその応用研究
著者:
森田 洋(北九州市立大学 国際環境工学部)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.93−102(2024)

著者はこれまでに天然系抗菌性物質(い草,モウソウチク,ビワ,卵殻又は牡蠣殻由来焼成カルシウム,クモノスカビ産生物質,脂肪酸類)を対象に,室内や生活環境で問題となる真菌,細菌,アメーバ,ダニ等に対する新たな制御法を構築し,これらの制御ツールを活用した新規用途開発について研究を進めてきた。い草は細菌類に対して広く抗菌効果が認められ,抗菌活性は熱やpHに対して安定的であったことから,薬湯や日持ち向上剤,住宅建材への利用等を見いだした。直鎖型脂肪酸及び脂肪酸塩は炭素鎖の長さによって,その効力に大きな影響を与えており,炭素数10~12の脂肪酸塩がその制御に最も効果的であったことから,畳表防黴剤の実用化等の応用研究を進めた。また近年では分岐構造をもった脂肪酸類にも研究対象を広げ,この中でも特に分岐型脂肪酸は室内塵性ダニに対して高い防除効果を有していたことから,食品包装資材への応用研究も展開している。天然系抗菌性物質に万能なものはなく,多岐にわたる中から適切なものを選び,最も効果を発揮できる条件を見いだし,その応用事例を構築することが重要である。本研究がその一助となることを期待してやまない。

Key words:
Juncus effusus var. decipiens(い草)/Fatty acids(脂肪酸類)/Control of microorganisms(微生物制御)/Mite control effect(ダニ防除効果).