表皮は外界微生物からの攻撃に対して抗菌ペプチドを産生し,生体防御の第一線を担っている。われわれは,黄色ブドウ球菌刺激と表皮ブドウ球菌刺激において,ケラチノサイトから誘導されるβ-defensinサブタイプの産生パターンが異なることを見いだした。近年,上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬が種々の悪性腫瘍の治療に用いられるようになってきたが,一方で,この薬剤による様々なタイプの薬疹の増加が見られる。しかし,これらの病態の詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多い。われわれは,EGFR阻害薬が黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対するケラチノサイトの自然免疫応答にどのような影響を及ぼすのかについて,in vitroおよび臨床検体を用いた研究を行った。その結果,EGFR阻害薬による薬疹の発症には,薬剤による自然免疫応答の撹乱と,それによって引き起こされる皮膚の細菌叢の乱れが密接に関わっている可能性が示唆された。