日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.52,No.5 (2024)

表題:
歯科医療分野における微生物制御
[2]デンタルプラーク
著者:
中村圭祐(東北大学 大学院歯学研究科 先端フリーラジカル制御学共同研究講座)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.205−211(2024)

デンタルプラークとは,口腔細菌が歯の表面に付着して形成するバイオフィルムのことを意味する。初期定着菌と呼ばれる細菌が歯面に付着して増殖するとともに,歯面に直接付着できない後期定着菌と付着(共凝集)することでデンタルプラークが形成される。デンタルプラークを構成する細菌は,EPS(extracellular polymeric substance)と呼ばれるバイオフィルムマトリックスを産生して外部環境刺激(薬剤や宿主免疫)から身を守りながら共生状態を確立している。宿主の食習慣や免疫応答などの影響などによって生息環境が変化すると,デンタルプラーク中の細菌叢のバランスが崩れてDysbiosisが引き起こされる。このDysbiosisにより病原性を有する細菌(病原性共生菌)の割合が増加すると,齲蝕(虫歯)や歯周病といった歯科疾患が引き起こされる。本稿では,デンタルプラークの形成,バイオフィルムマトリックスの組成,そしてデンタルプラークのDysbiosisと歯科疾患との関わりについて概説する。

Key words:
Dental plaque(デンタルプラーク)/Microbial biofilm(細菌性バイオフィルム)/Dental diseases(歯科疾患)/Oral microbiota(口腔細菌叢)/Dysbiosis.